先日の事業仕分けによる次世代スーパーコンピュータ(次世代スパコン)の予算見直しで事実上の「凍結」との結論が出たことで、多くの人々から次世代スパコンについて注目が集まることになったが、情報不足のためか、一部誤解があるようだ。そこで、自分の知っている範囲で次世代スパコンについて記したいと思う。もし自分の知識が至らず間違っている場合は指摘して頂けると有り難い。 次世代スーパーコンピュータ 次世代スパコン は富士通のCPU、 "Vinus" SPARC64 VIIIfx か、その後継CPUで構成する公算が高いが、このCPUはスカラ型だ。もともと、NECと日立がベクトル型のCPUを開発する予定であったが、撤退によりベクトル型とスカラ型の混成システムから、スカラ型のみのシステムに変更された。因みに、この富士通のCPU "Vinus"は現時点で世界最高速のCPUであり、国産で高速なCPUを開発できるのかという疑問も払拭できている。 ところで、この撤退により次世代スーパーコンピュータ開発について危惧する声が出たのだが、実のところ次世代スパコン開発に関わるユーザや開発者の一部では、開発がしやすくなったとして喜んでいたりする。もともとの混成システムでは、 実用的に使う場合 、ベクタ部はベクタ部のみの利用、スカラ部ではスカラ部のみの利用でしかパフォーマンスが出せず、これでベクタ部とスカラ部を一台に入れる意味があるのかというもっともな疑問が出ていたようだ。また、次世代スーパーコンピュータ開発実施本部のプロジェクトリーダーである渡辺氏がNEC出身であることからのあらぬ疑いもされずに済むようになったと思う。 NECと日立が撤退した理由として、 百数十億円の負担が重荷になった と答えている。しかし、実際はそんな負担額では済まなかったというのが関係者間での通説だ。つまり、それ以上の巨額の開発資金を企業は自腹で負担しなくてはならなかったのだ。では何故そのような負担をしてまでも次世代スパコンに参加したかったのか。それは「世界一高速なコンピュータを作りました」という事実が企業にとって非常に大きな宣伝になるから。世間一般ではそれで世界一の技術があると見なしてくれるのだ。それに、売り上げももちろん重要だが、技術者の士気も上がることのメリットが大きい。技...