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Folding@Homeはどうやって病気を治すのか?

PS3のFolding@Homeは、ついに1Pflopsの大台に乗った。いやはや数の力は偉大だ。ところでこのFolding@Homeだが、これがどのようにして病気の治療に役立つのかちゃんと理解している人がどれだけいるだろう。ただなんとなく人の役立つから動かしてみてるだけという人がほとんどじゃないだろうか。そこでここではその仕組みについて簡単に解説したいと思う。

まず、Foldingの意味から。Foldingとは折り畳みという意味で、ここではタンパク質の折り畳みを意味する。タンパク質はDNAから設計され、数十から数百のアミノ酸が一列に連なったものだ。なので、タンパク質の端と端をつかんで引っ張れば一本の細長い紐のようになる。この紐はアミノ酸の並びによって必ず決められた形に折り畳まれ落ち着くのだが、これをFoldingというのだ。

ではこのタンパク質の折り畳みがなぜ重要なのか? それはこの折り畳み構造によって生体で機能する働きが決定するからだ。この折り畳まれた構造に別のタンパク質や生体分子がくっつき、生命に必要な機能を発揮する。現在では、人間のすべてのDNAが解読されたので、すべてのタンパク質のアミノ酸の並びがわかる。もし、アミノ酸の並びだけで折り畳み構造がわかれば、苦労して生体からタンパク質を見つけ出さなくても良くなるのだ。そして、その構造が、薬の開発や病気の解明などの研究に繋がるわけだ。もっとも、現状ではアミノ酸の並びだけではまだまだ折り畳み構造を決定するのは難しいのだが。

Folding@Homeでは、単に折り畳み構造を求めるだけではなく、現在構造が明らかになっているタンパク質に対しても機能の解明などで役立っている。例えば、タンパク質の一部のアミノ酸(タンパク質は基本的には20種類のアミノ酸から構成されている)が別のアミノ酸に変異すると異常な働きをして病気になる。それがどのように起こるのかを、タンパク質の動きなどから予測できる。

最後にFolding@Homeの実際の計算方法について述べる。上記に示した折り畳みや機能の解明は、分子動力学計算や分子力場計算によって行われる。分子動力学計算とは、原子間の力を古典力学のニュートン方程式を解くことで、その動的な過程を解析する。分子力場計算では、原子間の位置エネルギーの総和から分子のもっとも安定な構造を決定する。基本的には分子動力学計算の方が、長時間の計算が必要になる。

以上、簡単にだがFolding@Homeについて説明してみた。自分が何をしているのか知ることは大事なことだと思う。

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