2007年6月24日日曜日

氷と炎の歌

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久々に寝食を忘れて読める本に出会った。

氷と炎の歌シリーズは、ジョージ・R・R・マーティンが著者のローカス賞受賞作だ。全7部作("A Game of Thrones" (1996), "A Clash of Kings" (1998), "A Storm of Swords" (2000), "A Feast for Crows" (2005), "A Dance with Dragons", "The Winds of Winter", "A Dream of Spring")の予定で、現在、原書で第4部まで刊行されており、日本語訳は第3部(「七王国の玉座(しちおうこくのぎょくざ)」、「王狼たちの戦旗(おうろうたちのせんき)」、「剣嵐の大地(けんらんのだいち)」)まで出ている。

内容は簡単に言えば、戦記もので第1部のタイトルにも入っているように、ある事件がきっかけで複数に分裂した王国の群雄割拠物語である。それだけに登場人物も非常に多い。北部では人外の者である「異形人(The Others)」、現在では死に絶えたと言われる「ドラゴン」、ある種の魔法など、いくつかのファンタジーの要素もあるにはあるが、物語を味付けするためのスパイスとして入れられているに過ぎず、それが主となることはない。この物語は、現実世界となんら変わるところはない人間の生き様や愛憎を扱った、ヒューマンドラマなのだ。それだけに、嫉妬や憎悪など人間の負の面が赤裸々に描かれており、所謂「綺麗な」話を望む人々や子供たちは読まないほうが良いだろう。

この氷と炎の歌で特筆されることは、明確な主人公がいないことである。それぞれの章で登場人物の一人が指定され、その主観で物語が綴られている。その人物が感じたこと考えていることで構成されいるので、同じ物事の描写も章によって大きく異なる。また、選ばれる人物は基本的に立場の弱い人々である。弱いといっても社会的弱者という意味ではなく、その環境で困難な状況にある人物という意味であり、身分としての弱者ではない。このマーティンという作家は弱者を描くのがとてもうまいと思う。

この物語では主人公がいないと書いたが、裏を返せば安全な人物はいないということだ。どんな人物もいつでも死と隣りあわせなのだ。たとえいなくなれば物語が破綻しそうなだと思われるような本当に重要な人物だとしてもだ。それだけに、先の読めない展開にはらはらどきどきし、時を忘れて読み耽ってしまうのだ。

三国志演義や戦国時代の歴史小説などが好きな人やダーク・ファンタジーの好きな人には薦められると思う。

文庫本





単行本(ハードカバー)






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